矢満田篤二 萬谷育子 著「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす

ここでは私が養子について知識を深めた本についてご紹介させて頂きます。

今回ご紹介させて頂くのは矢満田篤二さん、萬谷育子さん共著の「あかちゃん縁組」で虐待死をなくす です。

愛知方式とは?

このタイトルにもなっている「愛知方式」とは、愛知県で主に行われている養子縁組の方法を総称したもの。

通常一般の特別養子縁組の方法と何が違うのかと言うと、「子どもの権利・福祉・利益」を保障するための制度であるということ。

養子縁組は子どもが欲しい親のための制度ではなく、この世に生まれてきた子どもが幸せに生きて行くためのものと定義しています。

そのため、愛知式養子縁組では通常の養子縁組と同じく性別、病気や障害の有無は一切不問なことはもちろん、その他にオリジナルな9つの条件を受けれ入れ誓約書に署名を記すことによって初めて子供を受け入れるスタートラインに立ったと言えるのです。

この9つの条件の中には「事実告知をすること」や「何か障害があったとしても保護責任を全うする」など、子どもが生きる上での権利を保障する内容や「自らの体験を積極的に伝えて行く」というこれから生まれてくる赤ちゃんへ対して明るい未来を作るために尽力するという内容が盛り込まれています。

愛着の絆形成の大切さ

乳幼児期を施設で過ごした後に、養親の元へと送られた子どもたち。その親子関係は順風満帆ではなく親子関係の不調が見られる場合があります。

こうした施設で過ごした子供を引き取った場合、親子としての絆が出来て行く過程が以下の4段階を経ていくことがわかりました。

・親子の絆形成の進展段階
【第1段階】
里母に上辺だけの懐き方を示し、いい子に振る舞う時期。短期間で終わる。
【第2段階】
いい子だったのが嘘のような、里親に対する嫌がらせと反抗を示す。親試しの時期。
【第3段階】
親試しのすべてを受け入れられることで、心理的な赤ちゃん返りに入る時期。
【第4段階】
甘えが満たされ健全に成長していく。顔立ちや動作が里親に似てくる時期。

これら一連の行動をまとめて「反応性愛着障害」と呼んでいます。

どうして施設で育つと愛着障害が生じてしまうのでしょうか?

その最大の理由は「特定の安定した依存対象者」と愛着の絆を結ぶことが困難になるからとこと。

生まれてすぐの3ヶ月間が赤ちゃんにとって、愛着の絆形成の視点から見てもっとも重要なため、この時期に「病気など特記すべき事柄が無いかまずは様子を見よう」と施設に入れてしまうのは赤ちゃんにとっても、そして養親にとってもいい結果とはならないことが多いのです。

産まれてくる前から家族になることの大切さ

著者の矢満田さんは愛着の絆形成の大切さを第一に考え、生まれてくる赤ちゃんを施設に入れない為、生まれてくる前からサポートすることが大事と考えています。

実際に本書の中では妊娠してしまったけれども産むことの出来ないお母さんと、産んでから赤ちゃんを育てるお母さんが一緒に生活したり、一緒に病院の母親学級に通う様子が記されています。

実際に出産することは出来ないものの、自分の我が子の成長を見守り産まれてくるその日を待ち遠しく待つ。それは紛れもない「母親」の姿であると感じました。

また、産まれてくる前に家族を決めることによって、実際に出産するお母さんにとっては心理的負担が少なくなり心穏やかにその日を待つことができるメリットがあるそう。

産まれてくる赤ちゃんのことを第一に考えているからこそ出来る対応だと思います。

産まれてからの「どうしよう」を減らす

この本は赤ちゃんが産まれてから「どうするか」と対応するのではなく、妊娠がわかった時から対応して行くことが赤ちゃんにとって大切、と繰り返し述べています。

「子どもが欲しい」という親の意思を尊重するだけではなく、子どもの権利を守るための愛知式養子縁組、ぜひ今後の日本のスタンダードになってくれることを願っています。

 

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